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豊田工業大学 研究センタースマート光・物質研究センター

スマート光・物質研究センター

2016年度設立 センター長:藤 貴夫

【スピントロニクス研究室】スピン自由度を利用した機能性材料、デバイスの創出

准教授 田辺 賢士

主な研究内容・成果

 ①スピンを利用した熱流センサー開発

熱流センサーは、熱マネージメント社会における要素技術として期待されている。熱流センサーは温度センサーとは異なり、熱流を可視化することが可能なセンサーである。発熱前の異常な熱の流れ込みや、プラント内の加熱プロセスにおける熱流入量の最適化が可能になるとされる。これまで熱流センサーはゼーベック効果を利用して、開発が進んでいたが、価格に問題があった。ごく最近、スピンを利用した異常ネルンスト効果型の熱流センサーが提案され研究が進んでいる。我々は熱流センサーのさらなる高感度化を目指して、我々は従来とは異なる、熱伝導率に注目して研究を進めている。熱伝導率の評価は非常に難しく、100 nm以下の金属薄膜における評価法は存在しないが、我々は異常ネルンスト効果を使って、 1 nmの極薄膜での計測法の確立に成功した。またこの技術を基に、低い熱伝導率を有する材料に注目して研究を進め、GdCo合金において世界最高感度を実現した[Odagiri et al., Sci. Rep. (2024).]。(本研究室の修士学生が熱心に取り組んだ研究成果です。Natureグループの姉妹紙に出版されました。)

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熱流センサーと温度センサーの違いの概念図

②機械学習を用いた研究

磁気パラメータは磁石材料の特徴を知るうえで重要な値であり、材料開発研究における指標を与える。しかし、次世代磁気記憶デバイスなどにおいて重要とされる磁気パラメータの中には、評価手段が確立されていないものや、精度よく評価できないものがある。我々は機械学習を用い、強磁性体薄膜の磁区画像から評価が難しい複数の磁気パラメータを一瞬で同時に取得できること目指している。これまでの研究ではマイクロマグシミュレーションを用いて作製した磁区画像を用いてDMI定数は異方性分散の推定に成功している[Kawaguchi et al., npj Comp. Mater. (2021).]。(米国の磁気学会のチュートリアル講演や、ドイツの物理学会の招待講演、東大理物のipiセミナー、電気学会の招待講演など、注目されているテーマです。)さらに 光学顕微鏡画像を用いた実験画像からの推定にも成功している[Kuno et al., APL Mach. Lean. (2023).]。この研究では準安定状態の磁区画像からの推定にも成功している(本研究室の修士学生が熱心に取り組んだ研究成果です)。また、教師画像とテスト画像の撮像スケールが異なるような条件での推定にも成功している[Watanabe et al., Appl. Phys. Lett. (2025).] (本研究室の学部学生が熱心に取り組んだ研究成果です)。

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本研究の基本的なコンセプト

3次元スピントロニックデバイスの研究

これまでのスピントロニクスの研究は、そのほとんどが2次元デバイスを用いたものであった。しかし、3次元デバイスへの挑戦は次世代エレクトロニクスにとって喫緊の課題である。しかし、3次元化のためには、基板面に対して垂直方向への、微細加工技術が必要になっており、現在の技術ではほとんど実現できていない。我々は、ナノインプリリント法を利用して3次元デバイス作製技術を確立し、2次元デバイスでは到底実現し得なかった、高効率、高密度、高感度なデバイス開発を目指す。まず3次元熱流センサー開発を進めており、3次元デバイスが、2次元デバイスに比べ、けた違いに高い感度を示すことを明らかにした[Imaeda et al., Appl. Phys. Lett. (2024).]。(本研究室の修士学生が熱心に取り組んだ研究成果です。注目論文Featured Articlesに選出されたり、IEEEの発表賞を受賞し、注目されています。)

spintoronics_3.png熱流センサーの感度比較